食のバイオメカニクス
※図内説明をクリックすると詳細が表示されます.
(一部見られない箇所があります.)
「食文化」という言葉があるように,食べる行為は生活の一部になっています.
単に栄養摂取だけでなく,食物を味わう楽しさが重要です.特に高齢者にとっては,心地よく食事ができることは生き甲斐につながります.
私たちの研究室ではバイオメカニクス(生体力学)の研究を行っていますが,「食」をキーワードに考えると,これまで行った研究テーマが互いに関連していることに気づきました.少し大げさかもしれませんが,これを「食のバイオメカニクス」と提唱することにします。
- 顎運動表示分析システム
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患者別に顎運動を分析可能なシステムを開発しました.
顎運動は,患者の顎運動を光学的に計測すると同時に歯科用コーンビームCT装置で撮影された画像データから顎骨モデルを作成し,両者を統合することにより得られます.
任意の方向から三次元的に顎運動を観察しながら,指定された点の軌跡,速度,加速度の情報を同時に提示することができます.
【文献】
齊藤極, 木村仁, 伊能教夫, 藤川泰成, 竹内陽平, 槇宏太郎:
"咬合治療支援のためのハイブリッド型三次元顎運動診断システムの開発(個体別ハイブリッド顎骨モデルを利用した上下歯の接触状態の解析)"
日本機械学会論文集C編 Vol. 79, No.807, pp.4121-4130 (2013)
小関道彦, 中村基司, 小川尚己, 木村仁, 伊能教夫, 槇宏太郎:
三次元顎運動表示システムを用いた個体別顎運動の観察,
顎顔面バイオメカニクス学会誌, Vol.13, No.1, pp.11-17 (2008)
Michihiko KOSEKI, Akira NIITSUMA, Norio INOU and Koutarou MAKI:
Three-dimensional Display System of Individual Mandibular Movement,
Complex Medical Engineering, (Springer), pp.117-127 (2007)
小関道彦, 新妻晃, 伊能教夫, 槙宏太郎:
三次元顎運動表示システムの精度向上,
顎顔面バイオメカニクス学会誌, Vol.10, No.1, pp.16-23 (2004)
- 歯列咬合面の運動観察
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食物を咀嚼する際に上下の歯列は,咀嚼中の食物性状に応じて運動を行っています.
これを観察するために歯列の運動を正確に捉えることができる機能を顎運動表示システムに追加しました.
精密な歯型形状を有するハイブリッドモデルを用いて上下歯列の運動を解析します.図はガムを噛んだ時の臼歯部の運動軌跡を示しており,歯の傾斜面に沿って運動する様子が明確に捉えられています.
Trajectories of lower molar
【文献】
齊藤極, 木村仁, 伊能教夫, 藤川泰成, 竹内陽平, 槇宏太郎 :
咬合治療支援のためのハイブリッド型三次元顎運動診断システムの開発
(個体別ハイブリッド顎骨モデルを利用した上下歯の接触状態の解析),
日本機械学会論文集C編 Vol. 79, No.807, pp.4121-4130 (2013)
- 顎骨形状の力学
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動物の顎骨はさまざまな形をしています。たとえばヒト下顎骨はU字型ですがラットはV字型をしています。これらの形は咬合機能に関係していると考えられますが力学的な検討はほとんど行われていません。そこで セル・オートマトンモデルを利用してこの問題にチャレンジしてみました。顎骨に働く力として4種類の咬合条件を与えてコンピュータシミュレーションを行ったところ、実際の顎骨形状とよく似た形が得られました。
a rat mandible
Structural formation of a rat mandible
Simulation result (left) and an actual rat mandible (right)
Estimated biting conditions of a rat
【Literature】
Norio INOU, Michihiko KOSEKI, Ichiro KATO and Koutarou MAKI:
Structural Formation of Mandibles by a Cellular Automaton Model, Design and Nature II, WIT Press, pp.265-274, 2004
- 患者別応力解析,咀嚼力推定
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ヒトの下顎骨は三次元的な広がりがあり,咀嚼運動では種々の咀嚼筋が活動します.咬合時に下顎骨の力学状態を把握することはデンタルバイオメカニクスで重要な課題の一つです.私たちの研究室では,患者別の力学解析が可能な個体別シミュレーション手法を開発しました.
【文献】
小関道彦, 伊能教夫, 槇宏太郎:
ヒト下顎骨の個体別応力解析を目的とした咀嚼筋力推定,
日本機械学会論文集 C編, Vol.74, No.743, pp.1857-1864(2008)
小関道彦, 上西雅也, 伊能教夫, 槙宏太郎:
X線CT画像に基づく骨体の個体別モデリング手法に関する研究
(骨形態を考慮した要素分割手法の提案),
日本機械学会論文集 C編, Vol.72, No.717, pp.1470-1477(2006)
- 食品の材料特性
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スナック菓子は,形が似ていても内部構造は多種多様です(図1).この構造が食感に影響を与えていることはもちろんですが,生地の材料特性も重要です.本研究では,スナック菓子のミクロレベルの材料特性を調べる方法(図2)を開発し,従来のマクロレベルのヤング率と比べて10~100倍高い値であることを初めて明らかにしました.
Sectional images of snack foods (図1)
Micro-load testing machine (図2)
Ren KADOWAKI, Norio INOU, Hitoshi KIMURA:
Measurement of Microscopic Young's Modulus of Crispy Foods,
International Proceedings of Chemical, Biological & Environmental
Engineering, Vol.50, pp79-83(2013)
- 咀嚼時の人体動特性
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食物を破砕するときの咀嚼音は,気導音と骨導音から成ります.これらは頭の大きさと関係があると予想され,食感とのつながりを調べています.
図はスナック菓子を食べた時の子供と大人の咀嚼音を周波数分析した結果です.気導音と骨導音のどちらも頭部が小さい方が特徴的なピーク周波数が高いという結果が得られています.気導音は,口腔内のヘルムホルツ共鳴と関係し,骨導音は骨体の振動モードと関係すると考えられます.
大人
子供
【文献】
Ren KADOWAKI, Norio INOU, Hitoshi KIMURA,
"Effect of Vibration Characteristics of Skull in Mastication of Crispy Foods
on Food Texture",
Journal of Medical and Bioengineering, Vol.2, No.3&No.4, pp.186-190(2013)
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